現状の課題

音楽性に富んだイコライザーを作り上げる事。これに尽きる。
この世に星の数ほど機材があるが、その中ではアナログなイコライザーは少ない方だろう。
機種としても少ないし、生産台数としても少ない。これはなぜか?
その答えとして、使いこなすのが非常に難儀なアイテムだ、というのが一番だろう。
やたらと値が張る。その癖に使い難い。さらに言うと、それが無ければ音が出ないと言うわけでもない。
こんなものを店員に進められるがまま買ってしまったら、もうその店員が憎くて憎くて仕方がないだろう。


そんなイコライザーの存在価値だが、これは世間的に語るならば
「音の特性をフラットにする」くらいのものだろう。専門のスタッフが、マイクで拾った音で補正する。
それがアナログなイコライザーの一般的な用途で、素人が同じことを出来るようにしたのが
デジタルのイコライザーである。と、私は認識している。


この機材はデジタル化が進むにつれて一言で語りやすくなっていっていると個人的に思う。
「高価であること。そして精密である」
アナログイコライザーにあった、ちょっとした遊び(ステアリングホイールに例えられるやつ)が
デジタルに進むにつれてなくなりつつあるのだろう。まあそんなのは与太話にもならない見解ではあるが、
より精度が求められるようになっていると推測されるのは間違いではないと思っている。



その点、現在制作中のイコライザーにはそんな性能は欠片も求められていない。
精度に逃げるのは軟弱な思想である。精度を高めれば使い勝手は良くなる。
少なくとも左右のバランスも取りやすくなるだろうし、一つ一つの可変域の狂いを減らす効果も見込める。
そういった側面に対する努力は悪ではない。寧ろ善の類である。
では何が悪いのかと申しますれば、その差をゼロにしようとする神経質さが悪なのだ。
例えば誤差が1%あったとする。それが大きな誤差だと考えた技術者は
誤差0.1%を目指す。そこで止まればいいものを、達成してしまえば0.01%が気になりだす。
理論上ではその誤差を縮めることは可能だと言う一点に拘るのだ。そんなのは音楽とは無関係だと、私は思う。