恥ずかしながら、帰ってきました

真空管のアンプの実力を知りたい。むしろ、トライオードのアンプの実力が知りたい。
そう言ってT氏が持ち込んだトライオードのEL34のプッシュプルのアンプにマキシマはやられた。
「いうてマッキンやし、負けることはないやろ」という慢心が根底から覆った。覆させられた。


トライオードのアンプっていいね。悪い物ではないということだけは知っていたんだが、
つまり、どう良いかと言うことが分かってなかったんだが、今回の一件で嫌というほどわかった。
下手なアンプはトライオードに勝てない。定価100万とかするアンプでもあっさり負ける、と言うことが分かった。
ここからはマキシマがどう負けて、今後は何を糧に音楽をするかと云う事を記して行こうと思う。


敵を知り己を知れば百戦危うからず、とはよく言ったものだ。まず、敵はトライオードの球のアンプだ。
己は、「定価100万のアンプを使って慢心しきっている」状態を指す。もうこの両者だけで勝敗は明らかだ。慢心ダメぜったい。
トライオードのアンプっていうのは、基本的にシンプルなもので、私が以前使っていたラックスマンのSQ38シリーズなどとは
毛色が全く違う。部品点数から値段まで全く違うのだ。ラックスマンはラックスト―ンと呼ばれるほどの作り込みをしているので、値段もお高い。
それに対してのトライオードって言うと、こっちは半分自作した回路みたいなシンプルさが売りだ。そして安い。
この両者、同じ球のモデルでも全く違う風景が見える。それくらいの差がある。個人的に、ラックスマンは大音量で掻き鳴らすよりも、
しっとり聴くような視聴スタイルが合うと思う。対してトライオードは、ばんばんに鳴らすことが出来る。特にプッシュプルで40Wくらいのモデルは、
そりゃあもう爆音まで対応できる、爆音にしてもシンプルに鳴るために、基本的にはスピーカーのセッティングだけでどこまでも音量を吐き出すことが出来るようなアンプだった。
今回視聴したEL34のモデルはプッシュプルで45Wという大出力を誇る化け物みたいなアンプだったのだが、
そりゃあもう4343が唸る様に叫ぶ様に鳴るってんで、オーナーたる私は度肝を抜かれた。
アウトプットトランスも搭載しているので、逆起電力の影響もなく部屋を揺らすその出力は、引き攣った顔で「ちょっと、マッキン勝てないっすね・・・」と呟くことしかできなかった。


時に、「真空管十倍説」というのをご存じだろうか?
これは真空管に頭をやられた人知人が妄言の如く言っていたのだが、真空管の45W=トランジスタの450W」
真空管トランジスタと違って、球が焼き切れるまでのゆとりがあるので実質10倍だ」
という話だった。初めて聞いた時は正直に言って「頭をやられてんなあ」くらいにしか思わなかったのだが、
実はこれってかなりいい線言ってるらしい、というのが今回分かった。むしろ12,3倍くらいの威力があるんじゃないかとすら思ったね。
話を盛っていると思われる方は是非、トライオードのアンプを買って試してみてほしい。
実際、私の所有しているマッキンは250Wの高出力を誇るのだが(マッキントッシュでは中くらいだけど)、トライオードの45Wに手も足も出すことは出来なかった。
こと38cmのユニットを駆動させるという点においても、トライオードの45Wのが優れていると語らざるを得ない。
直接比較すると、「マッキンってこんなに非力だったっけ?」と真剣に考えてしまうほどの差があった。それもそうだよな。出力を比較すると倍くらいあるんだもの。


本当にフレッシュな音がしたんだ。まじで。「450Wクラスのアンプを繋いだらこんな風になるんだ」ってのが見えた。そんなのに250Wで戦いを挑んでも勝てるわけがない。単純な数字だけで負けるわけではないが。
まして貨幣価値で言うとマッキンは100万、トライオードは14万程、これでどう面目を立てろというのだろうか?
私の中でマッキントッシュというメーカーはある程度特別なものだった。それがこんなあっさりと敗北したのは、間違いなく驚天動地と言って差し支えない。
が、事実は事実である。マキシマとしてはここで「いや、マッキンのほうが凄いから」とか根拠のない妄言を吐くつもりは一切無い。


「こと音楽性にかぎってどちらが優れているか?貨幣価値もランニングコストもすべて差っ引いて、どちらがより良い音楽を奏でる事が出来るか?」

これが何よりも重要である。さらに言うと、「マッキンでどうやればトライオードに勝る音楽性があるのか?」
という点についての研究にもなる。やはりマッキンは大切な宝物なので、マッキン売ってトライオード買うとか言うこともできるわけもなく、
マッキンはマッキンの戦い方を模索していくしかないなぁ。という話である。つまり、敵を知り己を知れば、までは来たものの
今後の戦闘方針についてよく考えようと言うことだな。よくよく知ってマッキンに有利な戦場で戦いを挑む。これしかないのだ。





ってなわけで私もトライオード買いました。一時借りて比較する程度でマッキンの生き残りの道を模索できるほど敵は解りやすくはなかった。
じゃあ、自分も一つ調達して鳴らしてみるしかないよね。言うは易し。そしてクレジットカードから払うのもまた易しであった。



実はここに至るまでにエレキットというメーカーの6L6GCの球のシングル8.5Wの管球アンプも試したんだ。ロッサ氏に借りて。
これがまあ、普通に良い音出るんだわ。8.5Wって馬鹿にしちゃいかんよ。普通にHPD385が動くんだもんね。逆起電力もさほど受けずに。
エレキット、定価は5万程度である。コスパで言うと1/20という数字。そして充足感。もしも私がマッキン買う時にこの境地だったらマッキン買わない。間違いなく買ってない


んでまあ、シングルの球でも十分に戦うことが出来るという事を確認した私が発見したのがこのトライオードのKT88のモデルだった。12Wだった。
マキシマ、真空管出戻りである。今年はいろんなことがあったが、これが最後に控える一番のニュースだった。使い込んだらまた何か書こうと思う。