悪事の片棒を担いだ話・ルームチューニングの話

天井に音響を考慮した部材を張り付けると音が変わる。半端な変化ではなかった。
通常、市販されているものを使用する。値が張るものが多く、これを導入している人はもれなく基地外である。


今回は師匠が以前自作したという音響パネル(便宜上そう呼称する)を借りることができた。
それを元に改良したものを自作し量産するという暴挙に出たわけだ。買うと値が張るから。
ロッサ氏の部屋の進捗を確認に来た師匠に、私が設計し直した試作品と図面を見てもらうと
師匠のものを超えているという旨の評価を頂いた。その場に居られなかったのが残念だ。


約1800×350mmのそのアイテムを必要数量産すること、適切に配置することが今回の作戦要綱で、
その中には天井に張り付けると云う計画がある。左右に一枚ずつ張り付けて様子を見る。
多少重量があって、石膏ボードに張り付けるのに苦戦した。
結局、完全に固定するために直径8mmの穴を天井に開口するという、ちょっとした大工事になってしまった。これが悪事の片棒である。


・・・冷静に考えてほしい。「天井に穴あけて吊るそうぜ!」と言うやつがいるのだ。
私は全力で止めた。最初の案が頓挫し、穴あけしかないという段で全力で落ち着けと忠告した。
天井にでかい穴を開けるとか普通じゃない。押しピンですらちょっと躊躇しちゃうだろ?普通は。
が、当然のことながら奴は振り切った。第一の案で固定した状態で音楽を聴くと、素晴らしい効果があったのだ。
(第一の案では強度が不足しているという理由で却下にした。俺が)
その効果を知ってしまってからは、ロッサ氏は止まらなかった。あれよあれよという間に天井に穴開けちまった・・・
一発目の穴は、爆笑しながらビデオカメラで保存したものがあるのだが、あれは怖かった。
面白い可笑しい、そんな理由で笑いが込み上げたのではなく、「こんなことして大丈夫なのかな」と言った理由で
堪えようのない笑いが湧いてきた。普通じゃなかった。


今頃、ロッサ家の家人の方々にバレているのだろうか・・・あんなアホな計画を遂行してしまった私に責を問われないだろうか・・・
と言った不安があるのだが、それはロッサ氏が一身に受けるべきものである。なぜなら私は止めたから。



で、効果のほどはというとそれはもう絶大だった。聴いたことのない音が聴こえたと云っても過言ではない。
私のリファレンスにしている盤や、最近よく聴く盤を再生してもらったのだが違うのがはっきりとわかる。
ルームチューニングは、効く。貧相な思想だと言う勢力(主に高額品を扱う人が多いようだ)もあるらしいのだが、
はっきり言ってその手の連中は雑魚だと云っても過言ではない。
この変化が分からない奴は雑魚だし、この重要性が分からない奴もやはり雑魚だろう。
そのくらいの変化量で、本当にびっくりした。安い言葉になりがちだが、敢えて言わせてもらうと感動した。
ぞくりとするような音だった。身の毛のよだつ音だった。スピーカーの音ではなかった。部屋の音だ。
部屋を生かして鳴らさなければならない音が出ていて、それがルームチューニングというものなのだ、と身を以て知った。





私が触発されてルームチューニングに手を出すのも時間の問題だろう。
天井に穴を開けずにルームチューニングを出来ればいいな、と思った。