ガチンコ!トランスポート批評の巻

――この秋、ロッサ氏のトランスポートが壊れた――


というわけでロッサ氏はトランスポートを買うみたいです。その際に5機種も聴き比べることが出来、
そこに私は同席するという"一円も金を払わずに機材を眺められる"という美味しい思いをさせていただきました。いや楽しかったよ。
その中で気になった3機種についての批評を写真付きで殴り書いておきます。なかなかこんな機会もないですし。

    • エントリーNo.1 Mcintosh MCD751




壊れたというロッサ氏のトランスポートですね。今でも若干なら動くらしい。
ペアのD/Aコンバーターと相性の良いトランスポートを探す、というのが今回の計画でした。
当時の定価はD/Aと込みで100万します。これがスタンダードなのだから今回の選定にも非常にやり難かっただろうと思いますね。
私が思い浮かべるロッサ氏のプレイヤーと言えばこれなので、軽い曲も含めて色んな盤を再生してもらいました。
音の傾向としてはカリっとしてるけどマッキントーンとでも云えばいいのだろうか?
そもそもオールマッキンというキチガイ染みたシステムを構築してしまったロッサ氏だが、このトランスポートに関してはちょっと違う。
エソテリックのVRDSの心臓部を持つこのマシンは、これに合わせて作られたD/Aとセットで初めてマッキントーンがする、と言えば極端ですかね?
マッキントーンの含有率というのか、そういう成分がこのトランスポートにはそんなに大量に含まれているわけではない、と私は思っています。
その代わりにD/Aの含有率はとても高いです。私のシステムに繋げたらD/A一台でマッキントーンを感じるというエピソードがあるほどに。
そういう二台の組み合わせで製作されている機材なのでしょうね。その一方が壊れたとか泣くしかねえよな・・・


因みにこのトランスポートは「VRDSの音がする」と言う点で微妙にケチをつけられているらしいです。まあ師匠とかが言うのだから私は口出しできないのだけれど。
でも、師匠やロッサ氏が言うように、温かみを感じないちょっと硬めな音がする、とは私も思います。それを補うD/Aが凄いですよね。
私やロッサ氏は"アンチHiFi"を掲げており、このVRDSはややそういった音がするんですね。まあそれが好きって人が居ますからそれを否定するつもりはありませんが。
演奏者の熱気を感じるような音楽を聴きたい、という場合にHiFiとは相容れないと私は考えています。HiFiってのはただ忠実なだけだと思ってる。そういう論点でこの機材は
良くも悪くも標準となる性能を持っていると感じます。が、ちょっと切り込んだ発言をするならば、
ロッサ氏はこの機材が新品で手に入るとなっても買わないんじゃないかなーと思います。
確かに素晴らしいモデルであり標準でもある、その点を加味した場合もう一度これを買う、という選択肢は無きにしも非ずだとは思うのですが、
それでは可能性が閉じてると、ちょっと思ってしまいますね。様々なトランスポートを選定し、やはりこれが一番というのならばそれは良いのですが、
「壊れたから安易に買い直す」となればちょっとおかしいんじゃないか?と思いますね。やっぱり新しい機材を取り入れる熱意と云う物がなければ
その人のオーディオ人生はそれまでだろう、と言えば言い過ぎなのでしょうかね?
今回、良いトランスポートに触れることが出来たという体験を通して考えるのならば、私なら同じものを買うと云う事は無いと思います。
オーディオ人生で永遠に残り続ける指標ではありますが、プレイヤーなんて一番最初に死ぬ運命にあると言っても過言ではないんですから。
私も、良く聴いた人間の一人に数えられると思うので、寂しい気持ちもするのですが、運命には逆らえないのです。

    • エントリーNo.2 CEC TL3 3.0



プレイヤーで日本国産のモデルを選ぶというのは非常に良いと私は思っている。寿命の点で有利だろう。
一番早く寿命を迎える部品の中で壊れたらどうしようもないのがピックアップだ。これが国産ってだけで大分信頼性があると云う物だ。
だがこれにも盲点があって、「10年後、20年後に壊れた際にこの会社があるのか」という点に関してはなんとも言えない・・・
修理部品のストックとかどのくらいあるんだろうか?それでも海外のメーカーよりはありそうだから尚の事なんとも言えない。
今後急成長を遂げるメーカーなのか、はたまた没落していくメーカーなのか未知数である。


そういう微妙なことを考えてしまい、メーカーのイメージが勝手に作り上げられる。そして「CECはまあ悪くないとは思うけどね」
とか言っちゃうのがこの業界の"あるある"ですが(私も若干そうだった)、この機材の音楽を聴けー!!と言いたい。シェリル・ノームの声で言いたい。
こいつはすごいです。コストパフォーマンスに関してピカイチでしょう。音だってコストを考えるような音楽ではない。
十分にMCD751と張り合えます。しかもこっちは安いのです。「安くて良い音が聴けるなら最高だと思わんか?」とは師匠の言葉です。
・・・そこが気に入らないっていうユーザーもこの業界には多いってのは事実なんでしょうけどね。そんな人間にこそこの音を聴かせたい。


このマシンを使う前にCECの安いCDプレイヤー(新品で10万くらい)もトランスポートとして鳴らしたんですが、そっちは甘い部分が多かった。
でもそれは低価格帯でありながら要点を抑える、つまり決め打ちした音決めがされていたのです。で、このトランスポートを聴きました。
CECというメーカーのトーンポリシーはしっかり保っている。そのうえで安いモデルでは出来なかった部分にしっかりと
手を加えて調整がしてあり、上から下まで特に過不足なく再生している」というのが私の見解ですね。
まあ、好みをここで語ってしまえば若干高音に癖がありますね。これはCECのトーンポリシーの部分になるんですが、
私はちょっと苦手に感じています。なんと云うか、ギラつくんですよね。私のセッティングではその辺をバランスを崩さない範囲で消しているのですが、
その辺は私には合いませんかね。でもそんなのあらゆるセッティング次第でどうとでもなるので不問になる部分かと。
寧ろその部分を加点対象として、より良くその高音を引き出せるだろうなとも思えますし。ブライトな質感というのはこのマシンの良いところの一つです。


もう一つ印象を書くなら立体感も凄いと思いますね。何もかもが迫ってくるような音がします。その点に関しては圧倒的に感じました。
MCD751などと比較すると、マッキンって落ち着いた音楽を再生しますね。スピーカーとリスニングポジションの間の一定の距離までは
立体的に音楽を魅せるんですが、その一線は踏み越えてこないんですよね。そこらへんにマッキントッシュというメーカーの美学を感じます。
が、CECはそこらへんはマッキンと真逆ですね。とてもエネルギッシュに迫ってきます。高音の癖とも相まってじゃじゃ馬感が凄いですよ。
乗りこなせば相当な高見へと連れてってくれるんだろうなーと想像が出来ます。これはやっぱりすごいと思う。





CECはベルトドライブです。レコードじゃあるまいし、と思ってしまうのですが、この金属のスタビライザーは結構効きます。大音量で聴くと、分かりやすいですね。
このトランスポート自体をフローティングさせてやるともっと良くなるでしょう。
上蓋の開閉もしっかりした作りになっていて好印象でした。もっとチープなのかと思っていたのですが、そんなことはなかった。
上蓋をスライドさせてCDを入る、とか態々スタビライザーなどを乗せるとか、そういう特徴的な所作があるととても楽しいです。


このマシンの弱点を書かせてもらうなら、それはスイッチですね。どのスイッチも軽くてチープなんですよね・・・。
そこらへんがコストカットに繋がって、このプライスでの販売と云う事に繋がるのでしょうけど、そこさえ良ければ何も言うことは無かったかと思うと残念です。

    • エントリーNo.3 Mark Levinson No.37L




真打登場!!レビンソンをリラックスして聴くことが出来るなんて思わなかったぜ!!
師匠の店で展示してある品がロッサ氏の家にやってきて、こうして好き放題言えるなんて考えもしなかった。


「所でマークレビンソンって、どんなメーカーなんでしょうか?」と言う問いに答えることは出来ますか?
私は出来ません。真面目に音を聴いたことも無ければ碌に実物を見たことも無いのですから。
しかしこのガンメタの筐体だけは知っている。クソ高いメーカーだということも知っている。
マークレビンソンほど企業のイメージが先行しているメーカーも無いでしょう。流通量だって少ないですから有り触れた存在ではないのですね。
(ゴールドムンドとかLINNとかTADなども私のなかでイメージが先行しています・・・)


このモデルについての情報がほとんどないってのが怖いです。定価いくらなの?っていう基本的な情報ですら
今一つピンときません。錯綜していてわからないのですよ・・・。一説には128万で、一説には78万。この価格差はどういうこと??
そんな謎のベールに覆われた存在に触れる機会があるなんて僥倖!


音はと云うと意外としっかり密に作ってありました。この意外とっていう部分に対してマークレビンソンへのイメージが覗えますネ。
レビンソンは独自の回路を持ったマシンを作っているらしいってのは知っていたので、「このメーカーは自社の回路に自信があるのだ」
と思っていました。その回路に対する値付けがされているのだと。つまりはゴールドムンドの対極か?と思っていました。
なのでかなり精密な音が聴こえたのはちょっと驚きに近かった。ロッサ氏は別のところでレビンソンを聴いていたので私と真逆なこと
「細かすぎずに意外と暖かい音がする」と言っていて自分のイメージ像に大してとても驚きました。


そう、このマシンは適度に精密で温かみのある音がするのです。ちょっと暗くていい塩梅で音像が視える。CECの対極ですね。でも割かしブライトな表現もします。
立体感に関してはコイツは謎の世界観を持ってます。最初に聴いた盤だと「立体感は薄いな」と言う印象を受けたのですが、
何枚か再生していくうちに気付きました。このマシンが再現している立体感は幅でも奥行でも、迫ってくるものとも違う別の何かだと。
一見しただけでは分からないですが、不可思議な空間に対して音楽を奏でている、とでも云えば伝わるだろうか?
じっくり聴いてみてほしい。そんな機会そうそうないだろうけど、そういう不思議な音がします。まるで生き物ですね。


あとこのマシンはものすごくオタクな臭いがプンプンします。アニソン等の打ち込み音源を非常に上手く再生します。
高級機材でアニソンを再生すると「アニソンに対してちょっと高級な色付けして再生してるよ」みたいな感じが出てなんともちぐはぐなのですが、
このNo37は一味違います。臆面もなくアニソンを再生する、と表現したら適切だと思う。一切の外聞を排して
バリっと鳴らし上げます。こっちが恥ずかしくなるくらいの勢いで最初はちょっと困惑します。
そしてその直後にオーケストラを再生するという意地悪な順番でも余裕で対応してくれます。
「コンサート録音だと思ってたけど実はオンマイクなのか?」と思えるくらい音像がハッキリしていると感じました。
まあ、速いんですよね。切れ味が良すぎると云うか。嵌る人は嵌るって話なのですが、僕はやや苦手かもしれない。
もうちょっと「ふわっと」鳴らせれば私の好みに近づくのですが、そこらへんはセッティングで対応できる問題です。


最後に一点書き留めるなら、ディスプレイの光度を調整する機能に脱帽しました。そんな機能求めてる人居るのかよと。
いや、一点どころじゃない。トレイが薄すぎねえか?とかシャーシのデザインとか書きたいことは色々あるのですが書ききれないですね。
もしこの文章でマークレビンソンというメーカーが気になるなら何らかの方法で直接見て聴くことをお勧めします。
それによって私は一銭の利益もないのですが、私が受けた感動と衝撃は誰かに伝えたいと思いますし。もし所有出来たならいいなあと
流石に思わなくもない一台です。これでバリっとアニソンを聴いて過ごしたい。ちょっとロッサ氏が羨ましいぜ!!



  • 総括

楽しい日々でした。ああでもないこうでもないとロッサ氏と意見交換をするのは大変有意義だった。
トランスポートの試聴なんて機会はそうそうないです。CDプレイヤーをセパレートするなんてのはハイエンドの遠い世界の話です。
私なんて非セパレートを貫いていたのになぜかスピーカーがセパレートするという変態的な現象が起きているというのに・・・
ですが、私の所感ではCDプレイヤーは新品で20万、高くても30万くらいがいいと思いました。
音楽性に合わせてトランスポートとD/Aコンバーターを選ぶというのは、情熱と金さえあれば確かに合理的で自分の好みの音に近づくことは出来るのでしょうが、
それはどちらかが壊れたら完全に死にます。今回はレビンソンで決まりみたいな雰囲気がありますが、
「D/Aコンバーターとの相性の良い物が見つからない!」なんてのは悲劇にしか見えないですしね。
高額な機材を使っていい人間ってのは、高額な機材に乗り換えられる人間だけのような気がします。そして、そこに愛はあるのかと問われれば
非常に微妙な感じなのではないだろうか?私が機材に対して抱いている愛情が多すぎるだけなのか?


メンテナンスの問題や金額などを度外視して、本当に欲しい音が再生されるアイテムがあるなら、
ちょっとこういう世界に飛び込んでみても一興かと思います!以上!!