切実なる八畳コンプレックスの話

「キミんところはいいよ。部屋広いもん。羨ましいわ」
なんてことをロッサ氏がわりとマジな顔つきで言うのだ。
(こいつめ、マッキンやレビンソンに飽き足らず部屋まで欲しいと抜かすか)
というのが私の返答に込めた内容であったが、今日ロッサ氏の部屋で軽く音楽を聴かせてもらったら
「あぁ、あいつがマジに言うだけの理由があるわ」と思った。


オーディオと云うのは部屋で決まる。これ常識。
機材も大変重要なアイテムではあるが、技術が上がればカバーできる範囲が増えてくるので、
"もう微調整をしてもどうにもなりません"という壁まで詰めればいい。それが出来る奴は高額な機材を扱うだけの資質を持っている。
そうやって苦戦苦闘を繰り返していると、ある時点で部屋の限界点が見えてくる。そこが第二部の幕開けである。


床の強度や壁の材質、窓の位置やクローセットの有無など、非常に細かい点が緻密に洗い出される。
で、最終的に部屋の広さがモノを言うのだ。エアボリュームなどという単語に該当するとか。
一定の広さに対しては一定の音量までしか出し難いという、ままならない問題に直面してしまうというわけだ。


これはもう、"持って生まれた境遇"としか言いようがない。そういうのは誰しもがある。
大抵の場合持ってる奴は持ってない奴の気持ちが分からないのだ。で、
持ってる奴は自分がどれほど恵まれた環境に居るのかが理解できていない場合が多い。
個人的にはロッサ氏は持ってる奴に含んで考えているのだが、部屋に関しては私の方が分があったらしく、
非常に卑屈な面構えで「羨ましいわ」と堪えきれずに呟くロッサ氏の境遇がイマイチわからなかったのだが、
本日音楽について語る機会があって、私の質問がどうやら部屋の問題を突くものだったらしく、
割とキレ気味に部屋(特に空気量)に対するオーディオの小言をロッサ氏は止め処なく語っていたというわけである。





広い部屋が欲しい。それは大体の人間が思う問題だが、それを切実に求める趣味の一つがオーディオである。